轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ちずにないまち

地図にない街

橋本 五郎

「新青年」1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,139 字 · 32 页

青空文庫

何もなかったらまた浅草へ帰って来るさ。俺はたいていあの時間にはあのベンチに行っているからな」

老人のいう言葉には何か力といったものが感じられた。その結果がいかなるものとも予想さえつかなかったが、なおしばらく右の冒険について老人と問答を交した末、寺内氏は勇敢にもその地図にない町をさして行くことに決心したのだった。

日は長くなったとはいえ、都会の夕暮は公園のベンチへも間もなく来た。まだ五時にはいくらかの間があったであろうが、夕刊の鈴はやかましくひびき、家々の軒には郷愁を呼ぶような冷たい電燈が輝きそめた。

老人と別れた氏は、不思議な興味に胸をおどらせながら、示された三越と駅のあの線から、ポストの煙草屋、それから一軒二軒三軒といわれたところの、疑問の町を訪ねたのである。

煙草屋の路地を入ったあたりは、まだそこここの家裏と変わった感じでもなかったが、それが一歩、四軒目の家の角を曲がると、東京の、しかも繁華なこの一角に、こんな奇妙な路地があったかと驚くばかり、その路地はゆれゆれと折れ曲がって、しかも左右のどの家もが、皆黒い板塀にかこまれて、その路地へ対しては、一軒として便所の口さえも開いてはいないのである。