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じごくかいどう

地獄街道

海野 十三

「モダン日本」1933(昭和8)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,814 字 · 22 页

青空文庫

君の口にはよく合うと思うがな」

と彼は自分のところへ置かれた盃をこっちへ薦めようとして、又別の声をあげた。

「オヤオヤ。ミチ子の先生、今夜はどうかしているぞ。コンコドスを僕のところへ置かないで君の前へちゃんと置いているじゃないか。莫迦に手廻しがいいなア」

そういって辻永は二つのグラスを横から眺めた。私の眼にうつったものは、辻永のグラスの黄色い液体、私のグラスの透明な液体であった。

「コンコドスって無色透明なのかい」

私は変な酒を飲まされてはかなわんと思って念のために訊ねた。

「ちがうよちがうよ。コンコドスは黄色いレモン水のようなやつさ。それ、そのとおり……」と彼は私の前の無色透明の酒を指した。

「その方のじゃないか」と私は彼のグラスに入っている黄色い酒を指した。

「イヤ、こんなに褐色がかってはいないよ」と彼は打ち消して、

「さア乾杯だ」

彼はキュッとグラスから黄色い液体を飲み乾した。私は狐に鼻をつままれているような気がしたが、アルコールときては目がないので、目の前の無色のカクテルを(彼は黄色だというのを)ググッと一と息に飲んだ。

「それでいい。それでいい。大いに愉快だ」