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じごくかいどう

地獄街道

海野 十三

「モダン日本」1933(昭和8)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,814 字 · 22 页

青空文庫

5

辻永は大変興奮してきたようだった。この分では今に酔払って前後がわからなくなるのであろう。私は今のうちに、先刻の話を聞いて置こうと考えた。

「あの話ネ、かゆくなるというのは、どういうわけなのだ」

「かゆくなるわけかい。ウン、話をしてやろう。――西洋に不思議な酒作りがある。それは禁止の酒を作っては、高価ですき者に売りつけるのだ。法網をくぐるために、酒瓶の如きも普通のウイスキーの壜に入れ、ただレッテルの上に、玄人でなければ判らない目印を入れてある。こうした妖酒のあることは君にも判るだろう」

「……」私は黙って肯いた。それは例の媚薬などを入れた密造酒のことを指すのであろう。

「これは大変に高価なもので、到底日本などには入って来ないわけのものだが、だが一本だけ間違ってこの銀座に来ているのだ。或るバーの棚の或る一隅にあるんだ。ところがそのバーの主人も、その酒の本当の効目というものを知らないのだから可笑しな話じゃないか」

「それでは若しや……」

「まア聞けよ」と辻永は私を遮った。「その酒は滅多に客に売らないのだ。だが特別のお客に売ることがあるし、また間違って売る場合もある。