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じごくかいどう
地獄街道
海野 十三
「モダン日本」1933(昭和8)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,814 字 · 22 页
それはバーの主人がときどき休む月曜日の夜に、不馴れなマダムが時々こいつを客に飲ませるのだ。勿論マダムはそんな妖酒とは知らず、安ウイスキーだと思って使ってしまうのだ。――ところでこの酒を飲まされたが最後大変なことになる」
「ナニ大変なこと!」
「そうだ。大変も大変だ、自分の身体が箱詰めになってしまうんだ。無論息の根はない。再び陽の光は仰げなくなるのだ」
「オイ辻永。その洋酒の名を早く云ってしまえよ」と私は卓子から立ち上った。
「まア鎮まれ。鎮まれというに」彼はいよいよ赤とも黄とも区別のつかぬ顔色になって、眼を輝かせた。「おれ様の探偵眼の鋭さについて君は駭かないのか。いいかネ。その妖酒を飲んで例のバーを出るとフラフラと歩き出すころ一時に効目が現れてくるのだ。まず第一に尿意を催す。第二に怪しい興奮にどうにもしきれなくなる。ところでそのバーを出てから尿意を催すと、どこかで始末をつけねばならぬが、適当なところがない。どこかで――と考えると、頭に浮かんでくるのは、その直ぐ先の川っぷちだ。その川っぷちへ行って用を足す。ところがその辺に桜ン坊という例のストリート・ガールが網を張っているのだ。