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ちじくさくせん

地軸作戦

海野 十三

――金博士シリーズ・9――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,005 字 · 18 页

青空文庫

そこへ運送相クレメンスキーが呼ばれた。

「やれクレメンスキーか、待ち兼ねたぞ」と、ネルスキーは宰相そっくりの声で、「で、早速たずねるが、あの一件はどうした。たしかに先方へ届いたか」

「宰相閣下、あの一件と申しますと……」

「あの一件を忘れているようじゃ困る。ほら、あれじゃ、燻製のあれを、ほら中国の金博士に届けろといったあれだ。まだ届けてないんだな、こいつ奴」

「いやいやいや、とんでもない。金博士のところへお届けする燻製十箱は、もう三日も前に向うへ着いています。そのことは、書類でもって御報告して置きました筈ですが」

「なんだ三日前に届いたのか。書類というはよく途中で紛失するものだ。そういう重大なることは、口答でするように」

「申訳ありません。では失礼を」

クレメンスキーが、こそこそと去ると、ネルスキーはにたりと笑って、額の汗をふいた。

「燻製十箱で、シベリアが常夏の国になれば、電信柱も愕いて花を咲かせるだろう。とにかくこれが実現されれば、やすい取引のレコードを作るというものじゃ――しかし金博士は、交換条件のあれを何日頃から始めてくれるのだろうか」

と、ネルスキーは、金博士が一日も早く、シベリアの雪と氷とを追っ払ってくれることを祈るのだった。