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うもれたにほん
埋もれた日本
和辻 哲郎
――キリシタン渡来文化前後における日本の思想的情況――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,399 字 · 43 页
特に政道に私なく、租税を軽減したということが、民衆の人気を得たゆえんであろう。その具体的な現われは、小田原の城下町の繁盛であった。それは京都の盛り場よりも繁華であったといわれているが、戦乱つづきの当時の状況を考えると、実際にそうであったかもしれない。
この北条早雲の名において、『早雲寺殿二十一条』という掟書が残っているが、これはその内容の直截簡明な点において非常に気持ちの好いものである。その中で最も力説せられているのは「正直」であって、その点、伝統的な思想と少しも変わらないのであるが、しかしその正直を説く態度のなかに、前代に見られないような率直さ、おのれを赤裸々に投げ出し得る強さが見られると思う。「上たるをば敬ひ、下たるをばあはれみ、あるをばあるとし、なきをばなきとし、ありのまゝなる心持、仏意冥慮にもかなふと見えたり」とか、「上下万民に対し、一言半句もうそを云はず、かりそめにもありのまゝたるべし」とかという場合の、ありのままという言葉に現わされた気持ちがそれである。虚飾に流れていた前代の因襲的な気風に対して、ここには実力の上に立つあけすけの態度がある。