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はかば

墓場

西尾 正

「真珠」探偵公論社、1947(昭和22)年11・12月合併号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,934 字 · 20 页

青空文庫

わたくしはこれらの魔法の糸によって不可知の深淵につながれたまま、たった一人となりました。

そしてこの距てられた表の場所は、あの虧けた三日月の交錯する光の下で、青々と拡がっておりました。

×    ×    ×

かの灰色の、荒廃した死の都の孤独な沈黙の中で、わたくしの心は最も恐ろしい幻想と幻影とを描いていました。幻怪なほこらや石碑はいやらしい風貌を現し始め、――なかば生きもののように見えました。血の通った影の群は、雑草のはびこった一層くらい隅々にひそんでいるように見え、時として、とびはねているようにさえ見えました。

影、――それは青白い、突きさすような三日月の光によっても消しさることのできない影でした。

わたくしは絶えずランプの灯で時計を見、電話の受話器に熱病的な焦燥を以て聞き入っていました。けれども、十五分ほどの間は何にも聞こえません。

やがて微かな響きが聞こえて来ました。わたくしは強い声で友に呼びかけました。気づかいつつもわたくしには、これまでトオマス・スティヴンから聞いたことのないような震え声が不気味な墓倉から聞こえ、その言葉はまことに意外でした。