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だんのうらのおにび

壇ノ浦の鬼火

下村 千秋

「赤い鳥」赤い鳥社、1927(昭和2)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,170 字 · 15 页

青空文庫

寺の坊さんは、びしょぬれになっている法師の着物をきかえさせ、あたたかいものを食べさせて、できるだけ心をおちつかせました。なにかに心をうばわれたようになっていた法師は、そこでようやくわれにかえりました。そして、お坊さんや寺男が、じぶんのために、どんなに心配をし、骨をおったかをしり、たいへんすまないように思い、そこで、なにもかも、お坊さんにうちあけてしまいました。

お坊さんはそれをきくと、

「法一さん、それは、おまえのふしぎなほどに、たくみなびわの腕まえが、おまえをそういうところへみちびいたのじゃ。芸ごとの奥に達すると、そういうことがあるもので、これはおまえの芸道のためには、よろこばしいことじゃが、しかし、あぶないところじゃった。昨夜、おまえは平家の墓場の前で、雨にぬれて、すわっていたそうじゃ。おまえは、なにかまぼろしを見て、そうしていたのじゃろうが、いつまでも、そうしていたら、平家の亡者の中へひきこまれ、ついには八つざきにされてしまうところじゃった。もう、どこへもいってはならぬぞ。わしは、今夜も法事で、るすをするが、おまえが使いのものに、つれていかれないように、今夜は、おまえのからだを、よくまもっておかねばならぬわい。