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だんのうらのおにび
壇ノ浦の鬼火
下村 千秋
「赤い鳥」赤い鳥社、1927(昭和2)年6月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,170 字 · 15 页
」
そこで、法師をはだかにして、ありがたい、はんにゃしんきょうの経文を、頭から胸、胴から背、手から足、はては、足のうらまで一面に墨くろぐろと書きつけました。そしてまた、着物をきせて、お坊さんは、
「わしは、まもなくでかけるが、おまえはいつものえんがわにすわっていなされ。やがて、れいの武士が来て、おまえの名をよぶだろうが、おまえは、どんなことがあっても、だんじて返事をしてはならぬ。万一返事をしたなら、おまえのからだは、ひきさかれてしまうのだ。また人のたすけをよんでもならぬぞ。だれもたすけることはできぬのだからな。そうして、おまえがりっぱに、わしのいいつけをまもりおおせたなら、もう、おまえのからだから、危険なことは消えさってしまう。おまえはもう、おそろしいまぼろしを、見ないようになるのじゃ。」
と、ねんごろにいってきかせました。
五
法一は、いいつけられたとおりに、えんがわにすわっていました。と、いつもの時刻がきて、いつもの武士が、裏門からはいって来ました。
「法一。」
しかし、法一は息を殺していました。
「法一。」
二どめの声は、おどすように聞えました。