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だんのうらのおにび

壇ノ浦の鬼火

下村 千秋

「赤い鳥」赤い鳥社、1927(昭和2)年6月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,170 字 · 15 页

青空文庫

ご主君も、ことのほかおよろこびになりました。お礼に、なにかよいものをおあげしたいが、旅のことで、なにもなくお気のどくです。けれどこれからあと六日の滞在ちゅう、毎夜来て、こよいの物語を聞かしてくだされば、ありがたいことです。あすの晩も、おなじ時刻に使いのものをあげますから、どうぞおいでくださいまし。なお、念のためもうしそえますが、ご主君は、ただいま、おしのびの旅をなされていられるのですから、このことは、どのようなことがあっても、いっさいひみつに、だれひとりにも話さぬよう、くれぐれもおたのみもうします。」

まもなく法師は、また女の手に案内され、大げんかんへ来ました。そこには前の武士が待っていて、法師をあみだ寺までおくって来てくれました。

四

法師が寺へ帰ったのは、夜あけ近くでありました。お坊さんも、夜おそく帰って来ましたので、法師はもう、寝ていることと思い、法師の部屋へ見にもいかなかったのでした。それで法師のその夜のことは、だれもしらずにしまいました。もちろん法師は、なにも話しませんでした。

つぎの夜でありました。法師はれいのとおり、寝間の前の、えんがわにいると、昨夜のとおり、重い足音が裏門からはいって来て、法師をつれていきました。