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へんなおとこ
変な男
豊島 与志雄
「中央公論」1923(大正12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,508 字 · 81 页
二
斯くて今井梯二は、南に縁側があり東に腰高な窓がある、その四畳半の室に落ち着いた。そして翌朝先ず第一に白木の机をあちこちへ持ち廻って、結局それを窓の下に据えた。この白木の机について、可なりたってから、彼は澄子へこう云った。
「机というものは学生にとっては、最も神聖なものであるべきです。だから私は白木の机を使ってるんです。普通のものは、どれもみな何かが塗ってあります。よく紫檀の机や何かで納まり返ってる者もありますが、紫檀は最もひどいごまかしもので、あれにはみな色が塗ってあるんです。そして生地の色らしく見えるのがなおいけません。私のこの白木の机だけは、天然自然の生地のままで、どんなことをしても剥げるということがありません。」
「だって、」と澄子は微笑みながら云った、「あなたはそれを毎日拭いていらっしゃるじゃないの。やっぱりごまかしじゃありませんか。」
「磨きこむのとごまかしとは違います。私は自然を磨きこんでるのです。」
そして彼は絹のぼろ布で、毎日必ず一回は、白木の机をきゅっきゅっと拭き込んだ。
さてその朝、机を窓の下に程よく据えてしまうと、次に柳行李の蓋を開けた。