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へんなおとこ
変な男
豊島 与志雄
「中央公論」1923(大正12)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,508 字 · 81 页
そしてやがて云った。
「あなたくらい分らない方はありません。私がこんなに心配していますのに、当のあなたがそんなお心なら、もう口出しは致しません。いえ致すものですか。どうとでも勝手になさるが宜しゅうございます。どんなにお困りなすっても、もう一切存じませんから。」
彼女は腹を立てて、その腹癒せの気味もあって、やたらに気忙しなく用をしたり、そこいらのものをかき廻したりした。それを今井は済まなそうな眼付でちらと見やって、それから首垂れて考え込むのだった。
然し彼女のそういう腹立ちを、澄子は傍から可笑しがっていた。
「お母さんくらい可笑しな人はないわ。自分のことはそっちのけにして、いつも他人のことばかり心配しているんですもの。」
それを辰代は聞き咎めた。
「馬鹿なことを仰言い! 自分のことは自分でちゃんとしていますよ。あなたまでそんなことを云うなら、私はもう何にも知りませんから、あなたが何もかもしてみるがようござんす。他人さんのお世話をするのは、そりゃ容易なことではありませんよ。」
「だって、今井さんは初めから変人だと分ってるじゃありませんか。」
「いくら変人だからって、御自分のものを他人に持ってゆかれて平気でいるのは、あんまりひどうござんすよ。