轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

へんなおとこ

変な男

豊島 与志雄

「中央公論」1923(大正12)年8月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,508 字 · 81 页

青空文庫

長い髪の毛を乱した今井が、横顔をこちらにして、彼女の平常着を引っかけ、襟を合したその両手を、そのまま胸に押しあてて、歩いてみようか坐ってみようかと思い惑った形で、なおじっと立ちつくしてるのだった。それと分った瞬間に、澄子はぶるぶると身体が震えて、何を考える隙もなく、母の方へ手探りに匐い寄って、力一杯に揺り起した。

「お母さん、お母さん、今井さんが……。」

出すつもりの声が出なかったのか、辰代はきょとんとした眼で見廻したが、澄子に指さされるまでもなく、今井の姿がちらりと動いて、半ば立て切ってある襖の影に、はいってしまおうとしかけた時、彼女はがばとはね起きて、次の室に飛び出していった。

「今井さんじゃございませんか。」

澄子の着物の中で、今井は棒のように立竦んだ。

「何をなすっていらっしゃるのです?」

見据えられた眼付を、身体を固めてはね返していたが、やがて今井はふわりと女着物を脱ぎすて、棒縞の寝間着一つになって、押し伏せられるように其処に坐った。辰代は澄子の着物を、片手を差伸して引寄せ、それから前腕に抱え取った。その威猛高な立像の前に、今井は頭を垂れて、一語一語に力をこめながら云った。