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へんじんでん
変人伝
佐々木 邦
「日の出」新潮社、1934(昭和9)年8月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,178 字 · 21 页
或晩、島崎さんがやって来たけれど、叔父は面会を謝絶した。
「憤っているんですよ。無理な男だ。道彦さん、まあ、聴いて下さい」
と島崎さんは僕の部屋へ来て話し込んだ。画伯はその頃地所を借りて住宅を新築していた。叔父も家を建てる意思があったから、島崎さんの地所を半分割愛してくれと申込んだ。永久に独身と定めているから、老後が案じられる。親友と一緒なら面倒を見て貰えるという肚だった。しかし島崎さんは庭がなくなるから困ると言って断った。すると叔父は憤ってしまった。友情と庭と何方が大切だ? そんな奴とはもう交際しないというのだった。
「困ったものですね」
「友人という友人と喧嘩をしてしまって僕達三人だけが残ったんです。自分で世間を狭めるんですから、損な性分です」
「しかしその中に機嫌が直るでしょう」
「君からも然るべく執り成して置いて下さい。初めから然う言ってくれゝば、もっと広いところを探して二等分しても宜かったんですけれど、今となってはもう着手してしまったんですから、仕方ありません」
「画工、早く帰れ。庭の松の木と碁を打て」
と叔父が書斎から呶鳴った。好い災難を蒙ったのは僕だった。