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なつのそうれつ

夏の葬列

山川 方夫

山川方夫『夏の葬列』。同一底本的分册已合并为一书。收入:夏の葬列、十三年、朝のヨット、煙突、お守り、一人ぼっちのプレゼント、待っている女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,161 字 · 122 页

青空文庫

十三年

明るい昼すぎの喫茶店で、彼は友人と待ち合わせた。友人はおくれていた。

客のない白い円テーブルが、いくつかつづいている。夏のその時刻は客の数もまばらで、そのせいか、がらんとした店内がよけいひろくみえる。

ふと、彼は、彼をみつめている一つの眼眸に気づいた。生温くなった珈琲にゆっくりと手をのばして、彼は、同じ窓ぎわの、五、六メートル先きのテーブルのその女をみた。

若くはない。女は、そろそろ四十歳に近い年頃に思える。上品な紺いろの明石らしい和服を着て、同じテーブルには、娘だろう、肩をむき出したピンクの服の少女がいる。少女は、ソックスをはいた白い棒のような細くながい脚を、退屈げにぶらぶら動かしている。

きっと、近くの会社にいる父親――つまり女の夫でも、二人は待っているのだろう。

新聞に目をもどしかけて、だが、彼はその和服の女の眼が、べつにうろたえも、たじろぎもせず、じっと親しげに彼に向けられたままだったのにひっかかった。誰だろう。誰か知っている人だったか。二、三度視線を新聞と往復させ、ふいに彼の喉に叫びのようなものがのぼってきた。頼子だ。

女は微笑をうかべていた。