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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
山川方夫『夏の葬列』。同一底本的分册已合并为一书。收入:夏の葬列、十三年、朝のヨット、煙突、お守り、一人ぼっちのプレゼント、待っている女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,161 字 · 122 页
中耳炎でその終戦直前の動員をサボっていたぼくに、そのころの話はほとんど未知の領域のことであった。ぼくは、男色についての一応の知識を、同じ十五歳のその彼からはじめて得たりもした。
「……しかしね」と山口はいった。「ぼくはあの戦争中のほうが、なんとなく毎日にハリがあったね。――からだも、丈夫だったし」
「そりゃそうさ」と、ぼくも心から同意して答えた。「なんといってもあのころは、ぼくらはもうすぐ死ぬんだときめていたんだしね。その、目の前の『死』に行き着くにきまっている残り少ない日を、一日ずつ生きていたさ。……毎日、糸がピンと張ったような気分だったね」
「もう間もなく自分が死ぬんだっていう確信、それがぼくたちに充実をあたえてたんだろうな。そんな気がする」
「そうさ、もうゴール・インだって気持ちでぼくたちは張り切って生きてたんだ。ところが、そのかんじんのゴールが終戦でどこかに消えちゃってさ。迷惑な話さ。生きるために生きるなんて、こりゃ撞着だよ」
「いま思うと、あのころは気がらくだったな。もうすぐ死ぬんだと思うと、なにか、いっさいがやけにカンタンで、気が軽くなってね」