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なつのそうれつ
夏の葬列
山川 方夫
山川方夫『夏の葬列』。同一底本的分册已合并为一书。收入:夏の葬列、十三年、朝のヨット、煙突、お守り、一人ぼっちのプレゼント、待っている女。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,161 字 · 122 页
――だが、そのとき、たぶんぼくと山口には、自殺未遂者の敗北感も、また、下界とはなれた鮮烈な生命を実感したという、感動の記憶もなかった。ぼくらには、ただ、それぞれ勝手なスポーツを真面目にやり終えたあとの、あの疲労だけがあった。
しばらくのあいだ、ぼくは同じ姿勢のまま、いちめんに死んだ魚の目玉の白さをむきだしにしている、どんよりと曇った冬の日のその天の魚を見ていた。低く垂れた雲のむこうに、かすかにB29らしい爆音が一つ、いつまでも聴こえていた。やがて、気がついたとき、山口の姿はすでに屋上にはなかった。ぼくは一人だった。風が急につめたく、おそろしいような、しびれるような、ヒリヒリする痛みとも哀しみともつかぬ感傷的な寒さを、ぼくはその風にもてあそばれている頬のあたりにかんじた。いったい、ぼくはなにをしているのだろう。なにをしようとしているのか、とぼくは思った。そうだ。とにかくなにかをはじめなければならない。――
ぼくはふらふらと落ちていたボールを拾うと、そのままいつもの壁に向かい、突然、わざと晴れやかな大声で「プレイ・ボール」と叫んだ。