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なつのそうれつ

夏の葬列

山川 方夫

山川方夫『夏の葬列』。同一底本的分册已合并为一书。收入:夏の葬列、十三年、朝のヨット、煙突、お守り、一人ぼっちのプレゼント、待っている女。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 60,161 字 · 122 页

青空文庫

そういう効果はあるが、ここに住んでいる人びとは、だいたい月の何日の何時ごろに喧嘩をする、自分たちもその例外ではない、ということがわかると、へんないいかただが、喧嘩の神聖さは消えてしまう。これは、周期的にかならず人びとをおとずれるヒステリーの発動というやつにすぎないんだ。そう思ってみろ。味気ない話だ。

便所へ行く。すると、真上の部屋の同じ場所でもコックを引き、水をながす音が聞こえてくる。そんな重なり合いが、何日もつづいたりする。……それまでたいして気にもとめなかったそれらの一致が、ぼくにはへんに気になりはじめたんだ。

ぼくは同一の環境、同一の日常の順序が、同一の生理、同一の感情にぼくらをみちびいて行くのではないか、と考えはじめたんだ。でも、それだったら、ぼくたちはまるでデパートの玩具売場にならんだ無数の玩具の兵隊と同じじゃないか。無数の、規格品の操り人形といっしょだ。

自分だけのもの、他のだれでもない、本当の自分だけの持ちもの、自分だけの領分、それはどこにあるのか。みんな似たりよったりの人間たちの集団の中で、ぼくは板の間にあけられた小豆粒のうちの、その一粒のように、いまに自分でも自分を見わけられなくなってしまうのではないのか?