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なつめせんせいのはいくとかんし

夏目先生の俳句と漢詩

寺田 寅彦

「漱石全集 第十三巻 月報第三号」1928(昭和3)年5月10日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,092 字 · 3 页

青空文庫

そういう意味での俳句で鍛え上げた先生の文章が元来力強く美しい上に更に力強く美しくなったのも当然であろう。また逆にあのような文章を作った人の俳句や詩が立派であるのは当然だとも云われよう。実際先生のような句を作り得る人でなければ先生のような作品は出来そうもないし、あれだけの作品を作り得る人でなければあのような句は作れそうもない。後に『草枕』のモニューメントを築き上げた巨匠の鑿のすさびに彫んだ小品をこの集に見る事が出来る。

先生の俳句を年代順に見て行くと、先生の心持といったようなものの推移して行った迹が最もよく追跡されるような気がする。人に読ませるための創作意識の最も稀薄な俳句において比較的自然な心持が反映しているのであろう。例えば修善寺における大患以前の句と以後の句との間に存する大きな距離が特別に目立つ、それだけでも覗ってみる事は先生の読者にとってかなり重要な事であろうかと思われる。

色々の理由から私は先生の愛読者が必ず少なくもこの俳句集を十分に味わってみる事を望むものである。先生の俳句を味わう事なしに先生の作物の包有する世界の諸相を眺める事は不可能なように思われる。