轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ゆうがおのもん
夕顔の門
吉川 英治
「婦人倶楽部 臨時増刊」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 13,956 字 · 29 页
一詫の妻
一
若党の楠平は、重傷だった。けれど生命だけは取止めたので、彼の義兄で、身分の低い同藩の侍――尾形周蔵を呼んで、懇篤に引き渡した。
その後、半年以上も過ぎて、お市の結婚は、極めて質素に執り行われた。――かねて正当な婚約のあった同藩の曾我部兵庫が、その日からの彼女の良人であった。
× ×
× ×
享保二年から八年までの歳月は、またたく流れた。
十九の年の過ちも、六年前の夢となって、お市は今なお水々しい二十五の御新造ぶり、良人の曾我部兵庫は、四十近い寡黙な侍であった。そして明けても暮れても、静かな海騒と、長閑な陽あたりの他、何事もない城下町では、この一家庭も、勿論、平和に見えた。ただ夫婦の仲に、子がないだけが淋しく思われる位なものであった。
一詫の妻
一
七夕も近い――夏の或る日の黄昏れだった。
お市は、ぽつねんと、雑草に委されている庭に立って、夕方の星を仰いでいた。まだ、外も、窓も、仄明るかった。
『お市っ。――鷹はどうした?』
良人の書斎から、兵庫の声が、その姿へ、鋭く投げられた。
『…………』
星を見ていたお市の眼は、そこらの木を梢から梢へ移されたが、良人の方は見もしなかった。