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やこうちゅう

夜光虫

織田 作之助

「大阪日日新聞」1947(昭和22)年5月24日~8月9日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,871 字 · 134 页

青空文庫

小沢はそのうしろ姿をじっと見送ったまま、ついて行こうとしなかった、ついて行く気もしなかった。いや、ついて行けなかったのだ。小沢の眼はいつかうるんでいた。

S署の刑事室――。

自首した青蛇団の連中の表情には、少しも暗い翳はなかった。

ことに、豹吉は昂然として、寂しそうな顔なぞ見せず、

「おれたちは堂々と自首したのよ」

という自虐的な快感を覚えていた。

それに、豹吉にとって、ますます愉快なことには、青蛇団が自首したことで刑事はすっかり驚いてしまっていた。

小沢がふん縛って連れて来たガマンの針助の自白によって青蛇団の正体はもう明らかになっていた。だから、S署では明朝を期して、一斉に検挙の網を打とうと考えていた。

そこへ、いきなり青蛇団が自首して来たのだ。

針助がつかまったことを、知ってか、知らずにか、――とにかく、意外だった。まさか自首して来ると思えなかった。よしんば、自首を計算に入れていたとしても、その来方があまりに早すぎる。

だから、刑事は驚いたのだが、その表情を見ると、豹吉は煙草の味がうまかった。

「人を驚かせるが、自分は……」

云々。

つまり、自首したということは、「何か人をあっといわせるような、意表外のことを……」