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よなきてっこつ
夜泣き鉄骨
海野 十三
「新青年」1932(昭和7)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,273 字 · 31 页
だが、こっちは、右手一本で、熔融炉の鉄梯子を握りしめ、全身を宙に跳ねあげたもんだから、左手に政の足首を握った儘、どどッと、下へ墜ちていった。右手を放しては、こっちが、たまらない。ガンと、横腹を、鉄梯子に打ちつけたがそのとき、幸運にも右脚が、ヒョイと梯子に引懸った。
(しめたッ)
と思った瞬間、頭の上からバッサリ、熱くて重いものが、わしを、突き墜すように、落ちてきた。そして、呀ッという間に、ヌラヌラと、顔や腕を撫でて、下へ墜落していった。それは、政の身体だった。辛うじてわしが掴んだ政の身体だった。(これを離しては……)と私は懸命に怺えたが、その恐ろしい重力に勝つことが出来ず、遂にツルリと、わしの指の間から脱けて、あいつの身体は、ヒラヒラと風呂敷のように、コンクリートの床を目懸けて、落ちていった。いや、全く、政の身体は風呂敷のように、舞いながら、墜ちて行ったのだった。わしは、どうしたものか、急に笑いたくなって、クッ、クッ、ウフウフと、鉄梯子に、しがみついた儘、暫くは、動くことが出来ない程だった。
6
「これは横瀬さん。珍らしいね。さァ、こっちへ入ったり、入ったり」