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よながひめとみみお
夜長姫と耳男
「新潮 第四九巻第六号」1952(昭和27)年6月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,604 字 · 56 页
そしてギリギリの大晦日の夜までかかって、ともかく仕上げることができた。手のこんだ細工はできなかったが、扉には軽く花鳥をあしらった。豪奢でも華美でもないが、素朴なところにむしろ気品が宿ったように思った。
深夜に人手をかりて運びだして、チイサ釜と青ガサの作品の横へオレの物を並べた。オレはとにかく満足だった。オレは小屋へ戻ると、毛皮をひッかぶって、地底へひきずりこまれるように眠りこけた。
★
オレは戸を叩く音に目をさました。夜が明けている。陽はかなり高いようだ。そうか。今日がヒメの十六の正月か、とオレはふと思いついた。戸を叩く音は執拗につづいた。オレは食物を運んできた女中だと思ったから、
「うるさいな。いつものように、だまって外へ置いて行け。オレには新年も元日もありやしねえ。ここだけは娑婆がちがうということをオレが口をすッぱくして言って聞かせてあるのが、三年たってもまだ分らないのか」
「目がさめたら、戸をおあけ」
「きいた風なことを言うな。オレが戸を開けるのは目がさめた時じゃアねえや」
「では、いつ、あける?」
「外に人が居ない時だ」
「それは、ほんとね?」