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ゆめのようなひるとばん

夢のような昼と晩

小川 未明

「良い子の友」1946(昭和21)年6、7月合併号

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 2,487 字 · 5 页

青空文庫

いつであったか、少年は、おばあさんの家で、これと同じ薬を煎じるかおりを、かいだ記憶がありました。そのおばあさんは、もう亡き人であるが。はるかな駅を出発するらしい汽車の、笛の音がしました。さびしくなって、内へはいると、お母さんは、ひとり燈火の下で、お仕事をしていられました。

「前のおねえさん、かぜをひいたのかしらん。」

「どうして?」

「お薬のかおりがして、窓が暗いのだもの。」

「そうかもしれません。かぜがはやりますから。」

お母さんは、そうおっしゃっただけでした。少年だけは、いつまでも同じことを考えていました。

「お母さん、月は、去年の春とちがって、あたりがあんな焼け跡になったので、びっくりしたでしょうね。」と、少年がいいました。

「昔から、戦争があると、こんなことがたびたびあったのですよ。平和な春の晩にはお琴の音がしたり、お茶をにるかおりがして、歌にも『あおによし奈良の都は咲く花の、におうがごとくいまさかりなり』と、たたえられた都も、今はあとかたなく、草がぼうぼうとしているのですから、考えれば、ほんとうにさびしいものです。」

「戦争がなければ、いいんですね。