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ゆめどのさつじんじけん

夢殿殺人事件

小栗 虫太郎

「改造」1934(昭和9)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,755 字 · 55 页

青空文庫

ああ、法水は何時の間にか、密室の謎を解いていたのだ。彼が語り始めた犯人の魔術とは、一体何んであったろうか?

「僕がこの説を組立てる事が出来たのは、多数の手や首を持っている、所謂多面多臂仏の感覚からなのです。所で、御承知の通り夢殿には、階下の正面に、殆んど等身大と思われる十一面千手観音の画像が掲っています。そして、僕がその感覚に気付いたと云うのは、恰度事件当日四時半頃の事なのでした。その時表面の厨子扉には、横手の※(「木+需」、第4水準2-15-67)子窓が黒漆の上に映って居りました。所が、それから網扉を開くと、正面の千手観音に不思議な運動が起るのを見たのです。と云うのは、最初厨子扉に映った※(「木+需」、第4水準2-15-67)子を見詰めて、それから網扉に嵌まっている縦桟の格障子を見たからなんです。つまり※(「木+需」、第4水準2-15-67)子窓の残像が縦桟の間に挾まって――そうした時に網扉を開いたのですから、当然一つの実像と一つの残像とが交錯して、そこに所謂驚盤現像(縦穴の並んでいる円筒を廻転させると、内部の物体が動くように見える活動写真的現像)が起らねばなりません。