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ゆめどのさつじんじけん

夢殿殺人事件

小栗 虫太郎

「改造」1934(昭和9)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,755 字 · 55 页

青空文庫

まず円筒形の色彩板を持ち出して、それを紫より緩く廻転を始めたるに、最終の赤色に至りて、同人は突如立ち上り、その赤色を凝視しつつ色彩板の周囲を歩み始めたり。此処に於いて、余は新規の実験を思い出し、同人の面前に赤色の布を掲げて、銃器を両壁に並べし通路の中に導き入れたり。然るに、その際興味ある現象を目撃せりと云うは、余が屡赤布を側の壁際へ寄せたるに、同人もまたそれに応じて、埋もれんばかりに身体を片寄せるかと思えば、また銃器に触れると、同時に身体を離し、その儘静止する事もありき。その現象は数回に渉り同一の実験を繰返して、結局確実なるを確かめたり。即ち、全身に斑点状の知覚あるためにして、その部分が銃器に触れたる際には、横捻が起らざりしものと云うべし)――」

読み終ると、法水は椅子を前に進め、徐に莨に火を点じてから、云い続けた。

「所で支倉君、そこに推摩居士を導いたものと、もう一つ、傷跡に梵字の形を残したものがあったのだ。勿論、犯人が、赤色の灯を使って、推摩居士を導いた事は云う迄もないだろう。そして、三階の階段口にある突出床から、下に方形の孔を開いている玉幡の中へ落し込んだのだ。