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おおきなかに

大きなかに

小川 未明

「婦人公論」1922(大正11)年4月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,912 字 · 12 页

青空文庫

「なんという、大きなかにだ。」といって、お父さんもびっくりしていられました。

みんなは、まだ起きるのには早いからといって、床の中に入りました。太郎は、夜が明けてから、かにを食べるのを楽しみにして、そのぶつぶつといぼのさる甲らや、太いはさみなどに気をひかれながら床の中に入りました。

明くる日になると、おじいさんは、疲れてこたつのうちにはいっていられました。太郎は、お母さんやお父さんと、おじいさんの持って帰られたかにを食べようと、茶の間にすわっていました。お父さんは小刀でかにの足を切りました。そして、みんなが堅い皮を破って、肉を食べようとしますと、そのかには、まったく見かけによらず、中には肉もなんにも入っていずに、からっぽになっているやせたかにでありました。

「こんな、かにがあるだろうか?」

お父さんも、お母さんも、顔を見合してたまげています。太郎も不思議でたまりませんでした。

おじいさんは、たいへんに疲れていて、すこしぼけたようにさえ見られたのでした。

「いったい、こんなかにがこの近辺の浜で捕れるだろうか?」

お父さんは、考えながらいわれました。

海までは、一里ばかりありました。