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おおきなかに

大きなかに

小川 未明

「婦人公論」1922(大正11)年4月

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 5,912 字 · 12 页

青空文庫

それで、こんなかにをもらった町へいって、昨夜のことを聞いてこようとお父さんはいわれました。

太郎は、お父さんにつれられて、海辺の町へいってみることになりました。二人は家から出かけました。

空は、やはり曇っていましたが、暖かな風が吹いていました。広い野原にさしかかったとき、

「だいぶ、雪が消えてきた。」と、お父さんはいわれました。

黒い森の姿が、だんだん雪の上に、高くのびてきました。中には坊さんが、黒い法衣をきて立っているような、一本の木立も、遠方に見られました。

やっと、海辺の町へ着いて、魚問屋や、漁師の家へいって聞いてみましたけれど、だれも、昨夜、雪の上に火を焚いていたというものを知りませんでした。そして、どこにもそんな大きなかにを売っているところはなかったのです。

「不思議なことがあればあるものだ。」と、お父さんはいいながら、頭をかしげていられました。

二人は、海辺にきてみたのです。すると波は高くて、沖の方は雲切れのした空の色が青く、それに黒雲がうずを巻いていて、ものすごい暴れ模様の景色でした。

「また、降りた。早く、帰ろう。」と、お父さんはいわれました。