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だいりきものがたり

大力物語

菊池 寛

「新大阪新聞」1947(昭和22)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,677 字 · 14 页

青空文庫

すると、女はさあ都へいらっしゃい、こうなればあなたも相当なことは出来るだろうといって、都へ立たした。この二人が情交をむすんだか、どうかはくわしく書かれていない。この女は、高島の大井子という大力女である。田などもたくさん持って、自分で作っていた。

ある年、水争いがあって村人達が大井子の田に水をよこさないようにした。すると大井子は夜にまぎれて表のひろさ六、七尺もある大石を、水口によこさまに置いて、水を自分の田に流れ込むようにした。翌日になると、村人が驚いたが、その石を動かすには百人ばかりの人足が必要である。その上、そんな多人数を入れたのでは、田が滅茶滅茶に踏み荒されてしまう。それで、村人が相談して大井子の所へ行って謝った。

今後は思召に叶うべきほど水をお使い下さい。その代りに、どうかあの石だけは、とりのけて頂きますといった。すると、大井子は夜の間にその石を引きのけてしまった。その後、水論はなくなってしまったが、この石は大井子の水口石といって、後代まで残っていた。この事件で、大井子の大力が初めて知れたのである。

ところが、近江の国にはもう一人大井子などよりもっと有名な大力の女がいた。