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おおとりものせんにんつぼ
大捕物仙人壺
国枝 史郎
「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页
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「ああ随分苦労したよ」トン公はちょっと寂しそうにした。
「俺らの一座へ来る前には、お前どこの座にいたな?」
「俺ら軽業の一座にいたよ」
「軽業の一座? ふうん、誰のな?」
「「釜無の文」の一座にだよ」
これを聞くと「爺つあん」は急にその眼を輝かせたが、すぐ気が付いてさり気なく、
「ああそうか「釜無の文」か……ところで諏訪ではご難だったそうだな」
「お話にも何にもなりゃあしない」
「それはそうと文の一座に綺麗な娘がいたはずだが?」
「幾人もいたよ、綺麗な娘なら」
「それ、文の養女だとか云う?」
「ああそれじゃ紫錦さんだ」
「うん、そうそうその紫錦よ、行衛が知れないって云うじゃないか」
するとトン公は得意そうにニヤリとばかり一人笑いをしたが「ああ行衛が知れないよ。……だが俺らだけは知っている」
「え?」と、「爺つあん」は眼を丸くした。「お前知っているって? 紫錦の行衛を?」
こう云う「爺つあん」の声の中には恐ろしい情熱が籠っていた。それがトン公を吃驚させた。
「おいトン公」と「爺つあん」は、夜具から体を抜け出させたが「ほんとにお前が知っているなら、どうぞ俺に話してくれ。お願いだ、話してくれ。