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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

それより妾にゃその人の方が気味悪く思われるがね」

「うん、こっちは大丈夫だ。俺らが付いているんだからな」

「では行こうよ。思い切って行こう」

そこで二人は露地を出て、浅草の方へ足を運んだ。

「トン公」とお錦は不意に云った。「今日彼奴らと邂逅したよ。源公の奴と親方にね」

「え!」とトン公は怯えたように声を上げたが「ふうんそいつあ悪かったなあ。一体どこで邂逅したんだい?」

「観音様の横手でね」

「それじゃ今日の帰路にだな」

「お前と別れてブラブラ来るとね、莚の上で親方がさ、えて物を踊らせていたじゃないか」

「ふうんそいつアしまったなあ」

「早速源公が後をつけて来たよ」

「え、そいつアなおいけねえや」

「ナーニ途中で巻いっちゃったよ」

「そいつアよかった。大出来だった」

話しながら歩いて行った。

こうして上野の山下へ来た。と五六人の人影が家の陰から現われ出た。

「おや」とトン公が云った時、堅い棒で脳天の辺りを厭という程ブン撲られた。「あっ、遣られた、こん畜生め!」こう叫んだがその声は咽喉から外へ出なかった。たちまちにグラグラと眼が廻り、何も彼も意識の外へ逃げた。

お錦は人影に取り巻かれた。