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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

それで死ぬのは惜しかあねえが、ここに一つ惜しいものがある。他でもねえこの箱だ」

布団の下から取り出したのは、神代杉の手箱であった。

「これをお前に遣ることにする。大事にしまっておくがいい。そうして俺が死んだ後で、窃りひらいて見るがいい。お前を幸福にしようからな」

ここでちょっと憂鬱になったが、

「そうだ、そうしてこの箱をひらくと、お前の本当の素性もわかる。もっともそいつはかえってお前を不幸にするかもしれねえがな。……だがそれも仕方がねえ」

「爺つあん」はしばらく黙り込んだ。

それからソロソロと手を延ばすと、指先を畳目へ差し込んだ。それからじっと聞き耳を澄まし四辺の様子をうかがってから、ヒョイと畳目から指を抜いた。

「これを」と「爺つあん」は囁くように云った。「早くお取りこの鍵を!」

見ると「爺つあん」は指先に小さい鍵を摘まんでいた。

「箱も大事だが鍵も大事だ。鍵の方がいっそ大事だ。だから別々にしまって置くがいい。この鍵でなければこの箱は、どんなことをしても開かないんだからな、……ところで紫錦よ気をおつけ。敵があるからな、敵があるからな。……で、もうこれで用はおえた。