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おおとりものせんにんつぼ
大捕物仙人壺
国枝 史郎
「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页
12
「爺つあん」はすっかり疲労てしまった。
ひどく感動をした後の、何とも云われない疲労であった。
で、布団を胸へかけ、静かに睡へ入ろうとした。すると襖がひっそりとあいて、雇婆さんが顔を出した。
「もし、親方、お客様ですよ」
「誰だか知らねえが断っておくれ」
「どうしても逢いたいって仰有るので」
「ところが俺は逢いたくねえのだ」
「困りましたね、どうしましょう」
婆さんはいかにも困ったらしかった。
「どんな人だね、逢いたいって人は?」
それでもいくらか気になるか、こう「爺つあん」は訊いて見た。と婆さんが返事をしないうちに、
「「爺つあん」俺だよ」という声がした。
開けられた襖のむこう側に、一人の男が立っていた。耳の付け根に瘤があった。
「おっ、お前は文じゃねえか!」
「爺つあん」は仰天してこう叫んだ。
「うん、そうだよ、「釜無しの文」だよ」こう云いながらその男は、ヌッと部屋の中へ入って来たが「婆さん」と、ひどく威嚇的に「お前あっちへ行っていな、俺ら「爺つあん」に用があるんだからな」
雇婆さんが行ってしまった後、二人はしばらく黙っていた。
「オイ」と文はやがて云った。「久しぶりだな、え「爺つあん」