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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

……いや全く久しぶりだ」

「うん」と「爺つあん」は物憂そうに「久しぶりだよ、全くな」

「おいら夢にも知らなかった。まさかお前が江戸も江戸、浅草奥山でも人気のある、葉村一座の仕打として、こんな所にいようとはな。……なるほど、世間はむずかしい、これじゃ探しても目付からなかった訳だ」

「目付けてくれずともよかったに」

「お前の方はそうだろうが、俺の方はそうはいかねえ」

「ところで、どうして目付けたな?」

「うん、それが、偶然からさ。今日お前のやっている葉村の玉乗を見に入ったものさ。俺だって生きている人間だ、たまには楽しみだって必要ってものさ。ところでそこでトン公を目付けた」

「ああ成程、トン公をな」

「彼奴は元々俺の座で、道化役をしていた人間だ」

「そういうことだな、トン公から聞いた」

「ところが今じゃお前の座にいる」

「ははあ、それじゃ、それについて、文句をつけに来たんだな」

「うんにゃ、違う、そうじゃねえ。……俺ら信州の高島で、とんでもねえブマを打っちゃってな、一座チリチリバラバラよ。だからトン公がどこにいようと、苦情を云ってく筋はねえ。だからそいつあ問題外だ。……とにかくトン公を目付けたので、それからそれと手繰って行って、お前という者を探りあてたのよ」