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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

「で、お前の本心はえ?」こう「爺つあん」は切り出した。

「よく訊いた、さて本心だが、どうだい「爺つあん」交換しようじゃねえか」釜無しの文はヅッケリと云った。

「交換だって? え、何の?」

「永年お前が欲しがっていた、あの紫錦を返してやろう。その代り一件の手箱をくんな」

「成程」と云ったが、「爺つあん」は、変に皮肉に微笑した。「その交換なら止めようよ」

「え、厭だって? どうしてだい?」文は明かにびっくりした。

「もうあの娘には用がねえからさ」

「おかしいな、どうしてだい?」

「俺の心が変ったからさ」

「だって、お前の子じゃあねえか」

「それに」と「爺つあん」は嘲笑うように「噂によるとあの紫錦は、高島以来お前の所から、行衛を眩ましたって云うじゃねえか」

「え?」と云ったが釜無しの文は、顔に狼狽を現わした。しかしすぐに声高く笑い「トン公の野郎め、喋舌ったな!」

「手許にもいねえその紫錦を、どうして俺らへ返してくれるな?」

「うん」と云ったが、行き詰ってしまった。

「だがな」と文は盛り返し「いかにも紫錦は手許にはいねえ。だが居場所は解っている。源公が後をつけて行ったはずだ」

「ふうむ」