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おおとりものせんにんつぼ
大捕物仙人壺
国枝 史郎
「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页
そうして彼らの真中に一葉の図面が置かれてあったが、他ならぬ千代田城の図面であった。
「これは浪士だ! 浪士の密会だ!」早くも察した小堀義哉は戦慄せざるを得なかった。
浪士達の方でも驚いたらしく、互に顔を見合わせたが、
「これは人違いだ。本庄氏ではない」琵琶師に扮した一人が云った。
「貴殿は一体何者かな?」
「拙者は旗本、小堀と申すもの、人を迫っ駆けて参ったものでござる」義哉は正直に打ち明けた。
「実は空家と存じましてな」
「左様、ここは空家でござる。……幽霊屋敷で通っている。外桜田の毛脛屋敷でござる」
これを聞くと小堀義哉は、「ああそうか」と思わず云った。天井から毛脛が下がって来て悪戯をするという所から、外桜田の毛脛屋敷と呼ばれ、いつまで経っても住手のない家が、一軒あるという噂は、既に以前に聞いていた。「はああそれでは浪士どもが、集会の用に立てようため、そんな気味の悪い噂を立て、人を付近に近寄せないのだな」こう考えて来ていよいよ義哉は身の危険に戦慄いた。
その時浪士たちは顔を寄せ合い、しばらくヒソヒソ相談したが、
「さて小堀義哉氏とやら、我々を何と覚しめすな?」