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おおとりものせんにんつぼ

大捕物仙人壺

国枝 史郎

「太陽」博文館、1925(大正14)年7月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 47,606 字 · 97 页

青空文庫

鼬が手箱を狙ったのは偶然ではあるまいと推量した。そこで、手箱を持ったまま女中部屋の方へ入って行った。ふたたび彼女が現われた時には、風呂敷に包んだ小さな箱を、大事そうに両手で捧げていた。そうして主人の居間へ行くと、袋戸棚をそっと開け大切そうに藏い込んだ。

お花の聡明な心遣いが、無駄でなかったということは、その夜が更けてから証明された。

庭の茂が幽に揺れると、香具師風の若者が手拭でスッポリ顔を隠し、刻み足をして現われたが、ぴったりと雨戸へ身を寄せた。

こういうことには慣れていると見え、二三度小手を動かしたかと思うと音もなく雨戸がスルスルとあき、横縁が眼前に現われた。その向こうに障子が見え、それを開けると義哉の居間で、主人がいないにも拘らず燈火がポッと射していた。

香具師風の若者は、膝で歩いて障子へ寄り、内の様子をうかがったが、誰もいないと確かめると躊躇せず障子を引きあけた。それからスックリ立ち上ると袋戸棚の前へ行き、手早く箱を取り出した。

その時人の気勢がした。

あわてた彼は盗んだ箱を手早く懐中へ捻じ込んだが、もう足音を忍ぼうともせず、縁から庭へ飛び下りた。