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だいこのは
大根の葉
壺井 栄
「文芸」改造社、1938(昭和13)年9月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,854 字 · 50 页
「ほんなん、好かん。」
健は目をはげしくまたたいて、しみじみとしたようにお母さんの顔を見あげていた。
「健、キャラメルあげる、いうても見えんの、ほら健よ、おもちゃあげる、いうても見えんの。どんなおもちゃかわからんの。健よ、ごはん食べんか、いうてもお茶碗見えんの。忠ちゃん実ちゃんが、健ちゃん遊ばんかあ、いうて遊びにきても顔が見えんの。あの山も見えんの。」
お母さんは観音の山をさした。健もそれにつれてふりかえった。山の頂き近く、白い雲がゆっくりと流れていた。
「――それから、ほら、棧橋い汽船が来ても見に行けんので。大けな大けな軍艦がいつかしらん来たなあ、ほら、沖で晩に電気いっぱいつけて、仰山仰山、ならんどったなあ、あんなんが来ても健は見えんの。――健が道歩きよって、恐ろしい恐ろしい、角の生えたこって牛が駆けつけてきても健は目々が見えんせに角で突かれる。血が出るぞ。恐ろしいなあ。健がめくらじゃったらどうする。健めくら良いか、悪いか?」
「悪い! 牛が突いたら痛いなあ!」
健は右の人さし指で自分のおでこを突き、まるで牛に突かれたように痛い顔をした。お母さんもいっしょに痛い顔をした。