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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

23 他生の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页

青空文庫

「いったい、その立川流というのは、いつの頃、どこで起り出したものだろう」

「それは、今より八百年ほど昔、武蔵の国、立川というところで起ったのだが、その流行の勢いが烈しきにより、まもなく禁制となったにもかかわらず、ひそかに、その法を行うものが絶えなかったとのこと」

「ははあ、武蔵の立川が発祥地で、それから立川流という名が出たのか」

「それを、今時分、千隆寺の山師坊主がかつぎ出して、大分うまいことをしていたのが、今宵はその納め時」

というのが、七兵衛の耳に入りました。そうでなくても、その以前から七兵衛が気取ったのは、この二人の者は隠密だ。与力か、同心か、その下の役か、よくわからないが、とにかく、物をいましめるために忍んで来た役向の者に相違ないと、早くも感づいてはいましたが、さてこそ、めざすところは、自分と同じことに千隆寺。そうして、どうやら、この寺へ、以前から目星をつけておいて、今夜は踏込んで、手入れをする手筈がきまっているらしい。

それはわかったが、わからないのは立川流ということ。

武蔵の国、立川というところは、七兵衛が江戸への往還の道だからよく知ってはいるが、そこから立川流というものが出たことは知らない。