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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

23 他生の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页

青空文庫

いざやと壺振りが、勢い込んで身構えをする。

二三番するうちに、新入者がまた二三枚加わる。加わった当座は多少の目が出ると、有頂天になり、やがてそのつぎは元も子もなくして、着物までも脱ぎにかかる。取られれば取られるほど、眼が上ずってしまう有様が見ていられない。

こうなってみると駒井甚三郎も、相手を憚ってはいられない。そこで思いきって、一座の方へ進み出でました。

「これこれ、お前たち、いいかげんにしたらいいだろう」

「何が何だと……」

諸肌脱ぎで壺振りをやっていたのが、まずムキになって駒井に食ってかかりました。

「そういうことをしてはいけない、乗合いのものが迷惑する」

と駒井が厳然としていいました。

しかし、この遊民どもは、駒井が前の甲府勤番支配であって、ともかくも一国一城を預かって、牧民の職をつとめた経歴のある英才と知る由もない。このことばには荘重なものがあって、厳として警告する態度はあなどり難いものがあったとはいえ、今、異様の風采をして、ことには女にも見まほしいところの青年の美男子であるところに、彼等の軽侮のつけ目がある。そうして見廻したところ、相手は一人であるのに、自分たちは血をすすった一味徒党でかたまっている。