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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
23 他生の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,722 字 · 286 页
卿一行のあとを追いかけるものと思われる。
それは途中で相合したかどうか知れないが、ともかく、相州荻野山中の大久保長門守の陣屋が焼打ちされて、かなり多量の武器と金銭を奪われたのは、それから十日ほど後のことであります。
そうして高村卿の一行も、それを後から追いかけた南条、五十嵐らの一行も、薩摩屋敷へは戻って来ないところを見ると、この両者が議論をたたかわした通り、甲斐か飛騨かの方面へ、落合ったのかも知れません。
そう思って見ると、この間少しばかり途絶えていたあやしの神楽太鼓が、またしても、三国の裏山にあたって響きはじめたことです。そうして夜ごとに、山の奥へ奥へと響き進んで行くようです。
甲武信の下に山ごもりをしていた猟師の勘八がこの響きを聞いて、
「またはじめやがったな」
けれども、この響きを向う河岸の太鼓と聞いておられないことが、まもなく起りました。
ある日、由緒ありげな数人のものが、不意にこの猟師小屋へ押しかけて来て、食糧品と猟の獲物があらば、残らず買ってやるとのことです。
勘八は驚き呆れて、取蓄えてあった食物と獲物をそっくり提供すると、この連中はよろこんで、勘八に黄金二枚を与えて行きました。