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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

24 流転の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页

青空文庫

松浦の怒ったのは、吉本の思う壺であった。手もなくその策略にひっかかった松浦の気は苛立ち、太刀先は乱れる。その虚に乗じた吉本は、十二分の腕を振って、見事なお胴を一本。

「これでも九州第一か」

そこで斎藤歓之助の復讐を、吉本豊次が遂げた。その吉本の如きも、自分の眼中にないようなことを仏頂寺がいう。以上の者の仇を、以下の者がうったのだから、それだから勝負というものはわからない。非常な天才でない限り、そう格段の相違というものがあるべきはずはない。ある程度までは誰でも行けるが、ある程度以上になると、容易に進むものではない。

現代の人がよく、桃井、千葉、斎藤の三道場の品評をしたがるが、それとても、素人が格段をつけたがるほど、優劣があるべきはずはないという。

自然、話が幕府の直轄の講武所方面の武術家に及ぶ。以上の三道場は盛んなりといえども私学である。講武所はなんといっても官学である。そこの師範はまた気位の違ったところがある。男谷下総守をはじめ、戸田八郎左衛門だの、伊庭軍兵衛だの、近藤弥之助だの、榊原健吉だの、小野(山岡)鉄太郎だのというものの品評に及ぶ。それから古人の評判にまで進む。