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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

24 流転の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页

青空文庫

どうもこれは穏かでない。

なにもわざわざ、またそう軽々しく刀の鞘を外さなくてもいいではないか。

仕方話をするのに、真剣を抜いて見せる必要もないではないか。

兵馬は、仏頂寺の刀を抜いたのを大人げないと思い、丸山勇仙ですらが、意外に打たれたようです。仏頂寺はそれに頓着なしに、

「こうだ、ここへさがってこの通りに構えたものと思わっしゃい。いいかい、目は見えないのだよ」

といって仏頂寺は、自分の眼をつぶりました。彼は、先日の竜之助の取った通りの型をして見せるのです。

そこで兵馬は、一足さがって、その型を篤と見定めました。

仏頂寺は、冷然として、どこまでも本人の型通りに、青眼、こころもち刀を右へ斜につけた姿勢で、動こうとはしない。

「いよう! そっくり!」

と丸山勇仙が頓狂な声を揚げました。仏頂寺の型が、竜之助の音無うつしにそっくり出来たものだから、音羽屋! とでも言いたくなったのでしょうが、音羽屋とも言えないから、それで単にそっくりといってみたものでしょう。しかし、仏頂寺は笑わず、兵馬は痛切に、その型を打眺めていると、仏頂寺が、

「宇津木、どうだ、わかるか、わかったら打込んで見給え」