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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

24 流転の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页

青空文庫

と、やはり目をつぶったままで言いました。

「うむ」

兵馬は、仏頂寺の型を、身を入れて眺めているばかりです。

「わかるまいな」

仏頂寺は、いつまでも冷然と構えている。丸山勇仙が、妙な面で、それを横から眺めながら兵馬に向い、

「宇津木君、かまわないから仏頂寺を斬ってしまい給え、ああしているところを」

傍からけしかけてみる。

兵馬は無言で、仏頂寺の型を睨めている。仏頂寺は澄まし返って、その姿勢をいつまでも崩すことではない。

仏頂寺の態度は冷やかなものだが、それを見つめている兵馬の額に、汗のにじんでくるのを認める。その眼が輝いてくるのを認める。息づかいの荒くなるのを認める。

丸山勇仙が、そこでようやく一種の恐怖に襲われてきました。

この男は、学問の心得は相当にあるが、剣術は出来ない――これは前にいった通り。そこで最初は仏頂寺の型を、芝居もどきに冷かしてみたが、戯中おのずから真あり、とでもいうのか、ただしは、冗談が真剣になったのか、仏頂寺の構えたしらの切り方の刻々に真に迫り行くのが怖ろしく、それと相対した兵馬の態度が、いよいよ真剣になりそうなのに恐怖を感じだしました。