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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
24 流転の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页
そこで、七兵衛がいうには、自分の盗人ぶりの質の良いというのは、盗んで人を泣かすような金は盗まず、盗んだ金を自分の道楽三昧には使わず……ことに自分は盗みをするそのことに趣味を感じているのだから、盗んだあとの金銀財宝そのものには、あまり執着を感じていない。
たとえば、ここにこうして古金銀から、今時の贋金まで一通り盗み並べてみたが、これもホンの見本調べをやってみただけのもので、もうそれだけの知識を備えたから、綺麗さっぱりとあなたに差上げてしまっても惜しいとは思わない――つまり、盗むことの興味が自分の生命で、盗み出した財物は、楽しみをした滓だから何の惜気もない――といって神尾主膳を煙に捲きました。
しかし、また七兵衛は真顔になって、自分とても、ほかに何か相当の天分と、仕事をもって生れて来たのだろう、幼少の教育がよくて、己れの天分を順当に発達さえさせてくれたら、あながち盗人にならずとも、他に出世の道があったに相違ないという述懐を漏らします。
「そりゃそうだ、盗人をするだけの才能と、苦心を、他に利用すれば立派なものになる」
と神尾もまじめに同情しました。
しかし、今となっては仕方がない。