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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
24 流転の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页
四
時なるかな、宇治山田の米友は、峠の町から軽井沢の桝形の茶屋まで、真一文字に飛んで参りました。
「先生はどうした、おいらの道庵先生がこっちへ見えなかったかい……」
ここに桝形の茶屋というのは、軽井沢の駅の上下の外れの両端に、桝形に石を築いた木戸があって、そこに数軒の茶屋が並んでいる。追分節の歌の文句の一つにも、
送りましょかい
送られましょか
せめて桝形の茶屋までも
とあるのがそれです。
「え、先生、あのお医者さんの、あなたがそのお連れさんでしたか。これはどうも、今お迎えに出かけましたところで……それでお気の毒ですが、時の災難と思召して下さいまし、まことにハヤ、なんとも……」
木戸番と、宿から迎えに出た男衆とが、米友を見かけて、まずお見舞と、申しわけをするような口ぶりが、どうも合点がゆきません。
「時の災難だって……?」
「まことにどうも……」
「おいらの先生は来たか、来ねえか、それを聞いてるんだぜ」
「それが、どうも大変な事になっちまいましてね」
「何、何が大変だい――」
米友が思わず意気込みました。
「だからお留め申したんですけれども、お聞入れがないもんだから、仕方がございません」