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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
24 流転の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页
下で馬鹿囃子が湧き上りました。
これは多分、木更津方面の若い衆が、江戸近在へ囃子を習いに来ての帰りか、そうでなければ江戸近在の囃子連が房総方面へ頼まれて行く途中でしょう。
太鼓は抜きですが、笛とすりがねの音は海風に響いて、いとど陽気な気分を浮き立たせ、船に乗る者、さながら花車屋台の上にあるような心持になりました。
「おや、ごらんなさい、あの子は踊っているよ」
見れば艫の方から、左腕には般若の面を抱え、右の手を翳して足拍子おもしろく踊りながらこちらへ来るのは、清澄の茂太郎であります。
吾等笛吹けども踊らず……と誰がいう。
船の人は総出で、茂太郎の踊りを見に集まりました。
踊る人が出て来たので、囃し手の弾むのは自然の道理であります。
今や、艫の方から踊りながら歩いて来た茂太郎は、甲板の真中まで踊り進んで来ました。船の中の人という人は、みんな集まってこの踊りを見ていますが、茂太郎は恥かしいという色も見せず、さりとて手柄顔もしないで、しきりに踊っています。
囃子連の喜びは、喩うるに物なく、囃子にいよいよ油が乗ってくると、踊りもいよいよ妙に入るかと思われる。