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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

24 流転の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页

青空文庫

二十六

仏頂寺弥助は番付を取り上げて、

「どうも、おれは感心しない」

と丸山勇仙の顔を見ました。

「うーむ」

と勇仙も含み声。

同行の二人の剣客は、至極満足の体で納まっているらしい。

仏頂寺は何か納まらないものがあるように、

「丸山」

と再びその名を呼びかけて、

「今の海老蔵は、ありゃ何代目だ」

「左様」

丸山勇仙もそれに確答は与えられないらしい。

「海老蔵が団十郎を襲ぐのか、それとも団十郎が海老蔵になるのか」

「そうさな」

丸山勇仙は、それにも明答は与えられないらしい。

「第一、あの岩見の剣法なるものが、テンで物になっちゃいないじゃないか」

「そこは芝居だよ」

「芝居とはいいながら、海老蔵ほどの役者になれば、もう少し気がつきそうなものじゃ。箱崎の松原でバタバタと二十何人も斬って、いい心持で見得を切ったあの気障さ加減はどうだ。それに今のあの宇都宮の道場とやら、一刀流と看板が掛けてあったが、岩見の時代にまだ一刀流はない。あの道具、竹刀、あんなものもまだあの時代には出来はしない。その上、出る奴も、出る奴も、最初から、みんな岩見に擲られに出るので、かりにも岩見と張合ってみようという意気組みのものは一人も見えない、岩見はあいつらを擲るように、あいつらは岩見に擲られるように仕組んであるのが見え透いて、ばかばかしくってたまらない