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だいぼさつとうげ
大菩薩峠
中里 介山
24 流転の巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页
今日でもその額面のほとんど全部はヨーロッパにも絶えているが、もしそれが偶然、こうしてこんなところへ落ちて来たとすれば、それこそ破天荒の怪事――仮りにその謙遜な門弟の筆になり、後人の忠実な模写であるとしたところが、白雲の胸を刺して煩悶懊悩せしむるには充分でしょう。
今日も、明日も、白雲は額面の前で、エイ、ビー、シーを習い出し、頼まれた仕事を始める気色がありません。
八
田山白雲の身の廻りのことは、三度の食事から、蒲団の上げ下ろしまで、痒いところへ手の届くように世話してくれる者があります。
それは主として、両国橋の女軽業の一座の手のすいた者が、入代り立代りして、親方からいいつけられた通りにするものですから、不足ということはありません。
もっとも、今では両国橋の一座は手代の方に任せて、お角は直接に立入らないことにしているが、後見としてのお角の眼が光らない限り、立ちゆかないことになっているのですから、お角のいいつけによって働く人は、白雲を尊敬して、それに侍くこと、至れり、尽せりの有様です。
ところが、この絵描きは、豪傑の資質を備えていて、女軽業の美人連もうかとは狎れ難いものがある。