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だいぼさつとうげ

大菩薩峠

中里 介山

24 流転の巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,272 字 · 313 页

青空文庫

これは美徳とも、長所ともいえまいが、外国人が見たら、たしかに、日本国民性の一つの特色として驚異はするだろう、と駒井はようやく筆を進ませて、

「日本ノ貴族ニハ不法ニシテ傲慢ナル習慣アリ。足ヲ以テ平民ヲ蹴リテ怪シマズ。平民自身モマタ奴隷タルベクコノ世ニ生レ出デタルモノニシテ、人格ト権利ヲ没却セラレテモ、之ヲ甘ンジテ屈従スルモノノ如シ。惟フニ日本貴族ノコノ傲慢ナル風習ヲ改メシムルノ道ハ、耶蘇教ノ恩沢ヲコレニ蒙ラシムルノ外アルベカラズ」

そこで、なるほど、外国人の眼から見た時は、階級制度の烈しい日本の国では、貴族と、平民との関係が、こうも見えるのかしら、これでは野蛮人扱いだ、と思いました。しかしこれは、西洋で十六世紀から十七世紀の間、日本では戦国時代から徳川の初期へかけて日本に渡来した、主として耶蘇教の宣教師の目に映った日本人の観察である、日本人自身では気のつかない適切な見方もあろうが、また思いきった我田引水もあるようだ――現に日本貴族の傲慢なる風習を改めしむるの道は、耶蘇の教えを以てするよりほかはない、と断言したところなど、日本に宗教なしと見縊っていうのか、或いはまた事実この道を伝うるにあらざれば、人類救われずとの信念によって出でたる言葉か――駒井自身では動もすれば、そこに反感を引起し易い。